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Home >もっと底が知りたい!2005/7/25
報道 須賀毅

国民の健康より業界の利益が優先か!

 まったく、冗談ではない。連日、新聞やテレビを賑わせているアスベスト(石綿)問題のことである。報道がなされるにつれて、アスベスト問題の深刻さの度合いが増している。

アスベストは、天然に産出する繊維状の鉱物で、第二次世界大戦以降に一般社会に普及するようになった。酸やアルカリの影響を受けないうえ、耐熱、絶縁、吸音などに優れており、「燃えない、減らない、腐らない、
写真は福島民法7月22日付け
写真は福島民法7月22日付け
そして加工しやすい」という特性から、『奇跡の鉱物』と呼ばれた。その特性を生かし、日本国内でも建築物の屋根、内外壁に使う断熱材や耐火材を中心に、下水管や自動車のブレーキパッド、配電盤、接着剤、果てはトースターやベビーパウダーの混入物…と多岐にわたって大量使用されるようになった。
 しかし、ヨーロッパでは石綿工場の労働者が塵肺(じんぱい)で多数死亡したことをきっかけに、昭和30年代から健康被害が指摘され、国内でも昭和35年、48年にそれぞれ肺がん、悪性中皮腫の初の症例が報告されるようになった。旧労働省でも、昭和51年には、アスベストの危険性を認識していたにも関わらず、アスベストと健康被害の因果関係がはっきりしないとして、依然としてアスベストは様々なところで使われ続けた。

 その後、アスベストの発がん性が国際的に指摘されたことから昭和53年、当時の労働省は胸膜と腹膜にできる中皮腫と肺がんを労災対象とした。平成15年度までに660人が労災認定されている(療養中を含む)。労災認定された分野はアスベスト製品の製造企業のほか、加工して使う造船、自動車、鉄道、電力・ガス、化学など約20業種に上る。「優れた特性が広く工業製品の原料として活用されたことから、石綿を吸引する機会はさまざまな業種や業界で働く労働者に及んでいる」と厚生労働省は報告している。

 経済産業省と厚生労働省は、2008年までにアスベストを全面禁止にする方針を決めたが、なぜ、即時全面禁止ではないのか。代替物が見当たらないということもあるが、一説にはアスベストに関連する業界に対する配慮があるという。これでは、かつて厚生省が特定の製薬会社に配慮して血液製剤の輸入禁止を怠ったために血友病患者に多数のHIV感染者を出した「薬害エイズ事件」と同じ構造ではないか。つまり、国民の生命を守るべき役所が、国民の健康よりも業界の利益を優先しているのである。しかし、アスベストが我々の社会生活のあらゆるところで使用されている実態からすれば、その被害の甚大さは「薬害エイズ事件」の比ではない。
 さらに、戦後に建設されたアスベストを使ったビルや住宅の解体が今後ピークを迎えることから、飛散対策が不十分だった場合、解体作業者や周辺の一般住民への被害もあるという。アスベストが付着した夫の作業服を洗濯した妻が中皮腫と診断され、死亡していた事例も明らかになっており、アスベストの毒性の強さが懸念される。

 福島県ではアスベストに関する健康相談窓口を設けるなどの当面の方針を決定したが、被害拡大を避けるための抜本的な対策は、国の歩調に合わせるとまだまだ、先伸ばしになりそうだ。マスコミは、「市民の自衛策として、解体現場には絶対に近づかないこと」と警告を発するが、突然、危険だと言われても市民は対処法に困惑するだけだ。アスベストが引き起こす“中皮腫”は潜伏期間が30-40年ある。深刻な被害の実態が明らかになるのはこれからで、国は国民に真実を伝え、対処することが最大の責務である。(05.7.25)


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