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Home >斜め読み聞きかじり >2007/12/7

思案のしどころ「混合診療」

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏

 医療機関で診察を受けた場合、われわれが負担する費用は自己負担分だけである。残りは健康保険から給付されている。これは、診療内容が健康保険の範囲内で行われているからだ。これが「保険診療」である。しかし、ある患者が健康保険が適用されていない薬などの保険外治療を求めた場合、その病気の診療にかかった費用は10割自己負担になってしまう。これが「自由診療」である。保険が効かないんだから、止むを得ない、と納得できる。
 この保険診療と自由診療を併用すると「混合診療」と呼ばれ、現行の健康保険制度では原則禁止になっている。もし、敢えてこの混合診療をやった場合、費用は保険診療の分もふくめて全額が自己負担になってしまうのだ。「うーん仕方ないなア」という思いの半面、「なんで、二つを分けて考えないんだ」という意見も出て来よう。ある新聞のコラムがこんな例で解説していた。「おいしそうなリンゴが2つ。サービス価格の赤いリンゴと、サービス無しの青いリンゴ。その両方を買ったら、赤いリンゴの方もサービス価格でなくなった」。

 この理屈、おかしいのじゃないか、と裁判闘争を続けていた男性がん患者が藤沢市にいた。団体職員の清郷という人だ。訴訟に踏み切らせたのは高すぎる医療費だ。保険適用の治療で毎月約7万円払っていたが、はかばかしくない。そこで保険外の自由診療も受けることを決めた。すると自由診療費用の月50万円に加え、7万円に相当する保険診療費の全額が請求されて、月総額なんと75万円になることが分かったのだ。驚いた清郷さんは「望む治療を合理的な費用でなぜ受けられないのか」「混合診療禁止の根拠へ素朴な疑問がある」と裁判に踏み切ったのだ。しかも彼一人での闘いだった。弁護士は「混合診療を向こうに回しては勝つ自信がない」とみな逃げ回ったそうな。

 この裁判の判決が11月7日にあった。東京地裁は「混合診療の禁止は遵法だ」とし、清郷さんに保険の受給権があることを認めた。国側の敗訴である。これは国民にとって大きな判決と言っていいだろう。厚生労働省側の言い分は(1)混合診療を認めれば、金に余裕のある患者と余裕の無い患者の間に医療の格差が生まれ「医療の平等性」が失われる(2)国が認可していない医療や薬の安全性が保てない、である。そして結局、国側は11月16日、判決を不服として控訴した。あくまで混合診療の全面解禁を阻止する、と意気込んでいる。我々はどっちも正しいように思えて惑ってしまう。さてどう出るか、控訴審判決。(2007・12・5)


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