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駟(し)も舌に及ばず

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏

  古代の中国に「駟(し)」という乗り物があったらしい。4頭立ての馬車のことで、この世で最も早い交通手段とされた。今風に言うなら、5000CCの4WDレースカーとでも言おうか。馬ヘンに四という文字など、学校では習ったことがない。だからパソコンにもワープロにも無いだろう、と思ってたらチャントあったのには驚いた。

 前置きはともかく、「駟も舌に及ばず」という中国格言がある。”いったん駟から出た言葉は、最速の駟に乗って追いかけても間に合わない。だから、舌から出た言葉は覆すことは出来ないのだ”という意味である。「人の上に立つ者は、その言葉を慎重にしなさい」という戒めの格言なのである。ところが、こんな格言など頭の片隅にも無い大臣サマが次から次ぎへと出てくるのが安倍内閣の大きな特色になってきたのだ。「原爆はしょうがない」で辞職した久間前防衛大臣に続いて、今度は“麻垣康三”の一人で「次期首相に最も近い男はという下馬評の高い麻生外務大臣が地方講演で「アルツハイマーの老人でも分かる云々」としゃべって医療・福祉関係者から激しい非難を浴びた。初めから原稿に書いてあったのではなく、話の成り行きで、ごく自然にこの人の口から出た言葉だ。”だから、許せるだろう”という考え方はダメだ。こういうことが自然に出てくる素地がこの人にあるのだ。その素地はこれまで積み重ねた教養の浅さ・深さによる。麻生大臣はアルツハイマーに対する認識、その患者を抱える家族、肉親の苦しむ立場に思いが行き届かぬ素地の人間だ、ということになる。「駟も舌に及ばず」が最も戒めている人間はこういうたぐいの為政者なのだ。政界からは早くも”こんな人材を一国のトップにしていいのがと言った声が出始めた。もう一人、まだ辞めないで年金ミスの矢面に立っている柳沢厚労大臣もそうだ。「”女は産む機械”と言ったのは口が滑ったんだ」と言い訳しても、舌の速さにはでも到底勝てっこないのだ。

 いま、政界には新しいエリート階級が出来つつある。二世・三世・四世の議員で埋めつくされ、それはネオ貴族階級になりつつある。安倍総理も麻生大臣もみんな三世議員である。毛並みがよく、チバン・カンバン・カバンが生まれながらにして備わっている。当然、いい学校は出てくるが、民衆レベルの社会は果してどれだけ学び知っているのか。この辺に血筋の良さがもたらす弊害が見え隠れしているように思えてならない。麻生発言もこれじゃアないのか。(07.7.25)


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