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教育委員会を“無用の長物”にしたのは

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏
 「いじめで児童・生徒が自殺」「高校での必修科目の未履修が続出」など、にわかに教育制度や学校のあり方が強い日差しの下に照らされ始めている。時あたかも安倍新政権が発足して、憲法改正とともに教育改革を華々しく打ち上げたばかり。その露払いをやったのが“教育委員会の無用の長物”論だった。この教育委員会については筆者も長いこと形式化・形骸化にはニガニガしく思い続けてきた一人だ。昭和32年秋に新聞記者3年目で県教育委員会担当になった。当時は、いま話題の“団塊の世代"がまだ小学生のころで、父兄が「スシ詰め学級の解消」や「教員の増員」を知事や教育委員会に盛んに陳情していた。だから教育問題はニュースバリューが大きく常に紙面のトップを飾り続けていた。その頃から、教育長の“言いなり教育委員"の姿を見てきた。その前年の昭和31年に教育二法が改正され教育委員が任命制になった。これが戦後教育の大転換の元となったと思う。それまでは福島県の県教育委員5人は全県1区の選挙区で県民の投票で選任されていた。今の参院選のように立候補者が選挙カーで県内を駆けずり回って選挙戦を繰り広げた。いわゆる公選制である。後に代議士から知事になった故木村守江さんも政治家のスタートはこの教育委員だった。当選した教育委員はいずれも特色を持ったサムライばかりで、当時の教育財政は県財政と切り離されて独立性を持っていたから、毎年2月の県予算編成時には知事と対等で必要予算を要求、獲得した。これが法改正で知事による任命制になってしまった。福島県の場合は県内の5方部から公平になるように人材を選んで県議会の同意を得て任命した。当然、地方の名士が選ばれ、知事にへりくだる、意のままになる人物ばかりとなる。いま国会審議の中での話題は「教育委員会のなれあい体質」「責任の不明確さ」、そして教育委員は「非常勤で地元の名士。週に1回あるかないかの会議に出席し教育長の説明を聞くだけで、なんでも賛成」と手厳しい。「このままでは無用の長物だ」(毎日新聞11月4日社説)とまで言われている。だが、こんな殻ばかりの制度を作ったのは実は政府(文部省)自身なのだ。50年前、言うことを聞かない公選制教育委員を疎んで管理統制を強めたい一心で法を改正し、上意下達がきく任命制にした結果が“無用の長物"を生んだのである。だから国会も文部科学省も今度ばかりは人ごとのように対処してもらっては困るのだ。今日の事態を生むタネをまいたのが政府なら、その尻拭いを、ここは本気でやってもらわなければなるまい。(2006・11・10)


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