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残暑の中で“雪崩”が起きた

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏
 この春から日本国中の耳目を引きつけ続けてきた次期首相に安部晋三官房長宮がほぼ決まりとなった。自民党の総裁選びなのだが、その椅子は総理大臣に直結しているから首相選びといってよい。例の”麻垣康三”のうち、有力視されていた福田康夫前官房長官が「出馬するとは言っていないんだから、出ないとも言わない」などと言いながら結局は出馬を取り止めた。残る麻生太郎外務大臣と谷垣禎一財務大臣、そして9月1日に正式出馬を表明した安部氏の3人が争う形となった。9月20日に党所属国会議員の403票と都道府県連に割り振られた300票の計703票をめぐってしのぎを削るのだが、春から安部氏が50%を超える人気ぶりを維持し続けてきた。そして8月に入って党内各派閥に雪崩現象が起きたのだ。“バスに乗り遅れるナ”が合言葉になって、首相就任後にいいポストにありつこうと、安部支持にぞくぞく回っている。新政権を支える政策論争そっちのけの、浅ましいばかりの行動が目立っている。

 まあ、安部さんに今後の日本丸のカジ取りを任せるしかないのだろう。タカ派で靖国参拝もやるし北朝鮮にも強腰で立ち向かうだろう。ただ、気になることが1点ある。先頃、小泉首相の靖国参拝に関して批判的言論を展開していた加藤紘一衆議院議員の山形の自宅兼事務所が放火され全焼した。犯人は右翼団体の所属員で「靖国参拝批判が許せなかった」と動機を語っている。これは言論テロである。こんな言論封鎖を暴力で行う風潮が社会に広まったら大変なことだ。日本人は第二次大戦で社会が戦争一色に染め上げられた時の言論封鎖が惨めな敗戦を招いたことを、300万人の命と引き換えに学んだハズだ。だが放火事件のあと、小泉首相も安部官房長官も、メディアに批判されるまで2週間も一切コメントを出さなかった。これは言論テロから社会を守る最高権力者としては、もっと危険であり危機的状況だった、と考える。いま安部氏は着々とマスコミをなびかせ、かのNHK問題で敵だった朝日新聞も”軍門”に下ったらしい。週刊誌で最も先鋭的に安部氏の批判記事を書きつづけた週刊文春さえも、安部氏の著書でベストセラーとなりつつある「美しい国へ」の出版が文芸春秋社だったこともあって、これまた懐柔された、との情報もある。

 国家が間違った方向に進もうとしている時に言論が封鎖されては救いの道は無い。「物言えば、唇寒し」“なまじ物言えば禍を招く”の譬えがそのまま日本社会を言い表す言葉にならないよう、見守っていく必要がありそうだ。(2006・9・12)


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