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美と醜に分かれた「引き際」

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏
 人生には幾つかの区切りがある。95歳で現役医師である聖路加国際病院名誉理事長の日野原重明先生は人生を3つに分け第1を「成長の人生」、第2を「成熟の人生」、そして第3を「輝く人生」と名付け、75歳以上を正会員とする「新老人の会」を立ち上げた。高齢化社会では75歳からさらに15年?20年の残された第3の人生があり、新しい能力を発揮して社会に貢献しようというのである。この人の「引き際」は命を全うした時なのだろう。この日野原先生の意気込みには共鳴するが、一般人には出処進退を自らの責任で決めなければならない時が必ずある。しかし、その時の決断がなかなか難しいのだ。人間いざという時には迷うものだ。まして高い地位や重要なポスト、有名な立場にある人ほど引き際は難しい。最近も対照的なケースが幾つか出た。
 見事だったのはサッカー界の中田英寿選手である。日本のサッカーを世界レベルに引き上げ、ワールドカップ3回連続出場の原動力になった。日本人選手では世界のサッカー界で最も有名で有能な選手だろう。それがドイツ大会の予選リーグでブラジルに敗退、決勝トーナメントヘの道が閉ざされたとき、長い時間グラウンドに倒れ込み動かなかった。この時、彼は重大な決意をしたのだろう。すぐ引退を表明した。人々は驚き悲しんだ。年齢的にはまだまだプレー出来る、と誰もが思った。でも中田選手の思いは素人考えの上を行っていた。「サッカーという旅は終わった。私は次の新しい人生の旅に出掛けたい」一この言葉は哲学的だ。彼がすごく頭がいい人間らしいことは分かっていた。イタリアのチームに属すれば、すぐイタリア語をマスターしベラベラしゃべってみせた。この優れた頭脳は自分の人生の先を厳しく見つめ、そして決断する力を有していたのだ。イチローと双璧か、あるいは中田の方がその上を行っているかもしれない。プロ野球選手で、その先に野球解説者などという第2の人生を考えるプレーヤー達のレベルとは中田選手は全く違う人生を選択した。第3の人生の最中にある人間としては、羨望の眼差しで拍手を贈りたい。第2の人生も大成功してよ、中田さん。
 これに引き換え、福井俊彦日銀総裁の場合は「往生際が悪い」としか言いようがない。醜態と言ってもよい。素晴らしい金融マンだったのに晩節を汚してしまった。しかも任命者の小泉首相が「辞めなくていい」なんて早々と言ってしまった。政界では恥の文化は失せてしまったらしい。(2006・7・20)


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