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Home >斜め読み聞きかじり >2005/10/1

面白うて やがて悲しき

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏

 物凄い追い風に乗って自民党が歴史的大勝をなし遂げた衆院選だったが、落ちついて眺め回しているうちに「これは?」「奇怪しいんじゃないか」と思えるフシが次々に現れ始めた。選挙戦中から週刊誌の見出しにされていた「近衛の大政翼賛会から小泉の郵政翼贊会へ」が新たな不安材料になってきている。
 9月25日(日)朝8時からのTBS「サンデーモーニング」の放送によると、小泉政権の過半数議席(与党で3分の2超)に対し「やや不安」が43%「非常に不安」が21%、合わせて64%の国民がこの先の政治の行方に不安を覚えている、という。戦前・戦中派には、あの愚かな戦争に突入し日本を滅亡させた軍部一色の大政翼贊会の流れが頭をよぎるだろうが、今回の調査はもっと広範囲の人たちにも不安がよぎっていることを示している。特別国会を前に小泉さんもようやく郵政一点張りから、他の政策についても言及し始めたが、選挙運動では郵政しか言わなかった自民党。さて、ほかの政策を“あなた任せ”に白紙委任した覚えはないんだが、どういう政策を行ってゆくのか。増税、医療・福祉での自己負担増など傍若無人にやられたら、かなわない。でも、それをどうしてストップ出来る?…。この辺に限りなく不安が出てくるのだ。

 そして、もう一つ。自民党には83人の新人議員が誕生した。この中には、当選してピックリ仰天した若者や、名前を貸しただけの80歳の老人もいる。大体、開票時間が始まる前から当選が決まる、というのはいかがなものか。比例代表制が持つ矛盾が、今回の自民党圧勝で一気に吹き出した。刺客とやら言われた官僚や経済アナリストが小選挙区で「当選させて下さい」と下げる頭の中には「もう比例区で当選しているんだから一」という事実が納まっている選挙って奇経しいんじゃないか。投票権には当選させる権利と裏腹に“当選させない権利”も含まれているはずだ。「こんなにいっぱい歳費をもらって、こんな立派な議員宿舎にはいれて一」なんて喜んでいるような人間を国民の代表に選んだ覚えはない。自民党では新人議員に服装や言葉遣いまで教える研修会を開いたという。まともな常識、礼儀もわきまえない人間が国民の代表として相応しい人物なのか。その責めの大半は小選挙区比例代表並立制にあるのだ。
 宴が終わって振り返ると、理知的でなく情緒的な感情で投票した苦さが次第に濃くなってゆく。そういえば芭蕉にこんな句があった。「面白ろうて やがて悲しき 鵜舟かな」(2005・9・26)


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