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Home >斜め読み聞きかじり >2005/6/1

民営化は果して葵の印籠か

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏
 4月25日に起きたJR福知山線の脱線事故は107人の犠牲者を出した上に、いまだに苦しんでいる重軽傷者500人以上、さらにはぶつけられたマンションの住人にも深刻な心的被害を巻き起こしている。しかも、公共交通機関として全く避けられなかった天災とか、誰の目にも「やむなし」と思われる事由の事故なら諦めもつくが、次々に明るみに出るJR西日本の経営体質、社員の網紀の在り方の呆れた体質が怒りの火に油を注いだ。たった1分30秒の遅れを取り戻すための暴走の陰に、厳しい儲け主義が渦を巻いていた。そして、その過酷さを上司に訴える人間は一人もいなかった。それどころか、自分の会社の人間がとんでもない事故を起こし前途洋々の若者を中心に何十人もの死者が出し、懸命に救助活動が行われている最中に「決めたことだから」とボウリング、ゴルフ、宴会、カラオケをやっていた非常識、その非を一言も上司に進言出来ないロボット人間たちの、どでかい集合体がJR西日本だった。
 このJR西日本のとんでもない会社体質を目の当たりにして、大きな疑間が湧いてきた。この会社も元は国鉄。それが天下り的に全国を6つか7つに分割されて、一様に民営化された。この画一的な民営化に今回事故の震源があるのだ。東京と東北を抱え込んだJR東日本、東海道新幹線を担当するJR東海あたりは、それぞれにドル箱を握っていて営業成績は上々。一方、山陰の赤字ローカル線を大量に抱え込まされたJR西日本は初めから赤字体質だったのだ。しかも稼ぎ場所の大阪、神戸などには優良民営鉄道会社がひしめいていて、これとの競争がさらに大きな負担となった。「私鉄に負けるな」「とにかく稼げ稼げ」がJR西日本の合言葉になった。それが「1分30秒の遅れで屈辱的な日勤勤務に下げられ、草むしりさせられる・・、だからスピード出して遅れを取り戻せ・・」につながった。
 果して“民営化”は葵の印籠なのか。西日本の国有鉄道は民営化が正しかったのか。ここに疑間が出てくるのだ。たしかに民営化でサービスの進歩は頷ける。だが、全国を画一的にやって良かったのか。今、小泉改革の焦点、郵政民営化が大きな山場を迎えているが、既に小泉改革案は骨抜きになりつつある。郵便物をこれまで通り全国津々浦々まで配達する郵便配達会社のために1兆円の公的基金を設けなければならない“民営化”とは一体なんなのか。ここらで「民営化ってなんだ」と、もう1回問い直して考えてみる必要がありそうだ。(05.6.1)


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