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主幹 富田正廣

こんな業界にしたのは一体、誰?

 朝、いつも通り新聞に目を通すと、会津若松のある建設会社に勤め、52歳で会社が倒産し解雇になったという男性の投書が最近、地元紙のコラム欄で紹介されていた。タイトルを見ただけでも建設業に従事する者なら、目を反らしても飛び込んできそうである。よく読むとこの男性、下請け会社で働き、失業保険無しの日給月給の準社員扱いだ。談合は確かにあり、親会社が仕事を取り、20%カットで丸投げしてきたから自分の会社にも仕事が回され給料が入ってきたのだと告白している。さらに孫請けでは元請の半分で仕事をしたというのだ。それが脱談合で元請が6割、7割で受注していたのでは下請け、孫請けは死ぬしかないという切実な投書内容だ。50を越した男性に、これからの生活 が約束できる国の政策、改革ならこうした切実な訴えを聞くことはないはず。

 福島県の談合をきっかけに国、地方自治体すべてに入札制度の改革の波が押し寄せている。いつしか「談合は悪」であることが国民の間でもしっかりと定着した。昨年の「前知事逮捕!」以来、業者の口から、「談合は必要悪」とする反旗はいつしか翻らなくなった。“談合(話し合い、調整)は建設業に必要な手法である”ことを社会に、国民に理解されないまま、いつしか吠えることをやめて、「我々、建設業者は災害時には緊急出動し、河川道路清掃には協力し、自治体や市民のまつりごとには寄付をして、県民のため、市民のために努力しているのに、ここに来てなぜ、虐められるのか」と言う部分だけを強調し、正当化していることだ。その裏側で起きている一部の業者と政・官とのドロドロした癒着構造が問題なのだ。

 話しを戻すが、下請け会社で生きてきた先ほどの男性は何一つとして悪いことはしていない。一生懸命になって会社のため、家族のために働いてきたはずだ。そうした末端の人間にすべてのしわ寄せがかかってくる入札制度改革は一体、誰のための改革なのだ。発注者側は、官製談合が立証されても、「悪人は建設業者だ!」と決めつけんばかりに、知識人や著名人(業界を良く知らない人)を据えて、入札制度を見直し、あらゆる手法・規制の網で、業者を縛りつけた。その結果、業者は手足を縛られ手探りで明日の方向を探している。受注者側の本音を無視した制度は所詮、末端に生きる弱い人間を虐める制度に変わりはない。建設業者の心の奥底に、「談合はなくならない」という淡い期待感がある以上、今回の制度改革は元の黙阿弥に戻る可能性は否定できない。業者は何故、「談合は生きるためには必要な手法」を説いて立ち上がらないのか。幕末動乱の時代でさえ、誰が正しくて、誰が悪かったかは、時の流れだけが解決に導いている。今日もあなたの元で生きている社員や下請け・孫請けの人々を考えたら、何も闘わずして、野に下っては負け戦なのだ。こんな業界にしたのは一体、誰? (07.7.19)



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