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主幹 富田正廣

犯罪者か、談合決別か、退場か。

 2月22日、最盛期の4分1まで売上げを落とした福島市の青柳工業が特別清算の道を選んで会社を解散した。創業87年目にして激動の平成の舞台から退場した。27日には債権者会議で前社長の青柳隆夫氏が150人の債権者を前に、「激変する新しい時代に対応することは難しい」と解散の理由を説明した。新しい時代とはまさに入札制度の抜本的な改革の施行である。業者にとって改革の柱は一部を除き「すべての工事が一般競争入札に移行」され、これまで業界にとって受注調整が容易であった指名競争入札は談合の温床として消える運命となった。公共事業が主力である企業にとって一般競争入札が拡大すれば当然、仕事を奪い合うためのダンピングが起き、経営の見通しすら立たない現実は分かり切っている。さらに金利や資材価格の高騰が追い打ちをかける。決定的なことは、「談合」に対する包囲網がさらに厳しくなることだ。これによって戦後60年なんとか受け継がれてきた業界の互助的精神であった義理・人情、そして仁義は完全にうち砕かれ、ほんとうの意味の競争新時代が到来する。俗に言う公正性、公平性、透明性、競争性に優れた入札制度の導入であって、これまでの“赤信号、皆んなで渡れば怖くない!”方式は、まったく通じない所まで来た。

 青柳工業は保守的な考え方の経営者が多い福島市にあって、建設業者としては多角的にチャレンジしてきた企業であった。印象に残るのは、福島大学地域創造支援センターの理学博士で産学連携コーディネーータ(当時)である八代勉氏から青柳工業を紹介されたことだ。2004年当時、すでに青柳工業は前社長時代から、同大学と食品工場の共同開発を手掛けていた。八代氏は「これからの建設業者は、箱モノだけを受注する従来の方式から、工場まるごと受注する新たな方式を考え出すことが大切であり、これまで以上の付加価値をつけた建物を造ることで、業者も受注量を増やし安定した受注が可能になる」と話したことを思い起こす。ここ数年、“建設業の新分野進出”が騒がれているが、すでに青柳工業は、民間工事へのシフトを積極的に試みていたのである。
 今回のような特別清算による会社の解散は建設会社にとってベターな方法かは分からないが、少なくても胴体着陸で炎上する航空機と違って、多くの乗客の命が少しでも救えるなら、青柳工業が選択した軟着陸は最善の策と言えよう。

 「談合との決別」は、06年1月4日に決別宣言したはずの大手ゼネコン4社でさえ出来なかった。3月4日付けの朝日新聞のトップ記事はゼネコン4社が05年末に「談合決別」を申し合わせるまでの詳細が掲載されている。06年1月4日付けで「談合決別」を宣言したにも係わらず、「談合」の文字を入れずに配布されたコンプライアンス徹底を唱った文書はもろくも崩れ、談合続行に走った経過が記されている。文中に「建設業では、多くの場合、『ずっと昔から談合をやっていた』との答えが返って来るばかりで、『どこからを違反行為ととらえるか、難しかった』(公取委幹部の話)、刑事事件として立件するには業者が談合する際の『ルール』をいつ、どんな形で合意したのかの立証が不可欠だ」と談合立証の難しさを載せている。
 談合は建設業界がこれまで「必要悪」としてはばからなかったが、談合は社会のルールで「犯罪」としてはっきり位置付けられた。建設業者、建設業界は「談合はわれわれの業界ばかりではない」と反論するだろうが、「人を殺したのはオレ達ばかりではない。あいつらだってもっと多くの人を殺しているのに、たった一人しか殺さないオレだけを犯罪扱いするのか。あいつらを犯罪者にしてからオレを捕らえろ」と言っているのと同じだ。犯罪者の烙印が押される前に、談合との決別宣言ができるか、それとも青柳工業のように清く建設業という舞台から退場するか、遅かれ早かれ、公共工事を主とする企業には、犯罪者になるか、談合と決別するか、退場するかが問われるのである(07.3.5)



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