“積極的な財政支出こそ日本再生のカギ”
〜 森田実氏「公共事業必要論」〜
福島県建築設計協会創立50周年記念講演会

     
   
     
  (社)福島県建築設計協会は、創立50周年記念講演会として政治評論家の森田実氏を迎え「公共事業必要論」を題目とする講演会を開催した。森田氏は、昨年6月に刊行した著書『公共事業必要論』でも小泉政権の進める財政支出抑制政策を日本の行く末を危うくする誤った政策として痛烈に批判する。

  森田氏は著書『公共事業必要論』を著した理由として、実際に政策立案に関与している第一線の財務省キャリア官僚と話す機会があり、その際、あまりに多くの官僚が公共事業を国の財政を逼迫させるだけの「悪」と見なしていることに違和感を覚えたためと話す。現在の財務省官僚の多くは公共事業などの財政支出によって景気浮揚を促すいわゆるケインズ的経済政策を否定し、ケインズを「史上最低、最悪の経済学者」と酷評する。そのうえで、全ての悪の根源は政府の抱える膨大な借金にあり、この借金体質を解消することが国家の建て直しにつながると考える。こうした考え方に対して森田氏は一時的に国の借金が増加したとしても、不況時には積極的に財政支出する一方、減税によって景気を刺激する「成長政策」こそ現在の日本に求められていると考える。こうした考え方は小渕恵三政権時に実行され、一時は景気回復の兆しも見られたが、道半ばにして小渕首相が突然の死去、森喜朗、小泉純一郎両政権の反動的な政策によって景気回復の道は閉ざされてしまったという。森田氏はあと2年小渕政権が続いていれば景気回復はなっていただろうと悔いる。
  一方で、現在の日本が迎えている真の危機を大手マスコミが報道しようとしないことも問題だという。小泉政権の進める構造改革路線に大手マスコミは決して批判を加えない。例えば、小泉首相の就任時の公約として国債発行額を30兆円以下に抑えるとしていたが、2001年度の当初予算でこそ公約は守られたかのように見えたが、その後の補正予算で結局はトータル35兆円となり公約は破られた。しかし、そのことについては5大全国紙(読売、朝日、毎日、日経、産経)は一切報道しようとせず、その結果、異常な小泉人気は続いて日本の危機は深刻さを増してしまったのだという。
  2001年は51兆円の税収があったのに対して2004年には41.2兆円となり、わずか3年で10兆円近くの減収となった。このまま停滞が続けば近い将来税収は30兆円台に落ち込む。これはまさに危機的状況であるが、80兆円という国家支出規模は変えることができないという。なぜなら、少子高齢化などによって福祉に関する支出が膨大なものとなっているからである。現在頻繁に行われる公共事業バッシングでは、公共事業が財政危機の元凶のように批判されるが、公共事業の財政支出に占める割合はわずか18%程度で、80%は福祉関連支出である。その財政の大半を占めている福祉関連支出の改革について政治家をはじめ誰も言わないのは、マスコミなどの批判を恐れるからである。しかし、耳障りの良い口上を述べるだけでなく、改革すべきを改革し、必要な社会資本は批判を恐れず国民に提供することこそ国家の重要な役割であると森田氏は指摘する。

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