活断層と飯坂温泉
―福島西縁断層帯を考える―
(株)大和地質研究所代表取締役 大村 一夫

1.福島西縁断層帯
 松田時彦(1975)は「福島西縁断層帯」(付図参照)について以下のように述べている。
 福島西縁断層帯は福島盆地北西縁にある逆断層で、その平均変位速度は 0.1〜1m/10^3年であり、B級と考えられる。本断層帯に生じた歴史地震では、M=6.6(1731年)およびM=6.1(1956年白石地震)の2例があり、震央はいずれも本断層帯の北部である。本断層帯の全長は、L=45km、これに対応する地震の規模は M=7.6 であるが、これは実際に生じた歴史地震の規模と明らかに異なっており、本断層帯がエネルギー分割放出型であることを示している。
 この断層帯の南半は地震空白区間であってその区間長 L=約25km、それに対応する地震規模は M=7.2 である。一方、本断層帯の平均変位速度(B級)を 0.5m/10^3年とし、現在までの最小地震空白期間を800年とすると、それに対応する地震規模は M=5.8 である。したがって、本断層帯の南部区間から生ずる地震の規模は 5.8<M≦7.2となる。
 本断層帯の最大期待地震規模は、おおよそ M=7、地震周期は約3200年、発生場所は本断層帯の南半部と判断できる。

2.飯坂温泉と「福島西縁断層帯」

 付図を見ると飯坂温泉は正に「福島西縁断層帯」直上に位置する。
 同断層帯は、日本に104本あるとされている大地震発生の可能性がある活断層に含まれている(北海道・東北地域では24本中の1本、福島県では3本中の1本)。
 この事実に、どう対処すべきであろうか。以下の2-1)〜2-4)をベースに考えてみたい。

2−1)大地震発生の可能性がある活断層(長さ20km以上、活動度B以上の活断層)
 マグニチュード7以上の直下型地震が発生すると考えられる危険な陸上活断層(活断層帯を含む)として、長さ20km以上、活動度B以上が考えられている。これらの活断層を選び出すと104本になる(次表)。これらの活断層を主要起震断層と呼ぶ。福島西縁断層帯はHに区分され、5,000年前以降に最終活動があると考えられている。

 Hは1万年前以降、Wは3.5万年前以降、Sは13万年前以降、Pは13万年前以前(時代が特定できないものも含む)に最終活動があったことを示す。

2−2)活断層近傍は危険か

 活断層は地震の発生源となりうるのだから、活動性の大きな活断層ほど、そして長さの長い活断層ほど、活断層近傍は地震防災上危険と考えるのが常識である。なぜなら、活断層は地震の発生によってずり動くため、活断層直上の建造物は、ずれによってひきちぎられる可能性が強いからである。
 アメリカ合衆国のカリフォルニア洲では、「断層規制法」が設定されており、「最も若い活動時期が、11,000年前より若い活断層では、断層より片側 50フィート(15m)以内には人の住む家屋は建設させない」と定められている。この法律は、断層運動に伴う地表変動により、その直上部にある建物の被害を防止するために作られたもので、世界でもユニークなものであるが、地震動そのものは直接問題にしていない。なお、日本にはこれに類する法は存在しない。
 カリフォルニア洲の地震は比較的単純明瞭であり、ほとんどの地震は州内を縦走しているサンアンドレアス断層とこれから派生する断層で発生している。震源も20km以下のきわめて浅いものばかりである。
 サンアンドレアス断層系の主断層は、平均変位速度cm/年のAA級断層で、その再活動間隔も100年のオーダーであり、人間生活の尺度や、構造物の耐用年数と比較しても長すぎるということはない。
 サンアンドレアス断層系の一部では、地震を伴わない変位が常時進行している。その変位速度は年間cmのオーダーであるから、その直上部に構造物を設けるのは、地質を伴うと伴わないとにかかわらず、災害を蒙る可能性が高いのである。次のページ《平成8年4月25日執筆》(05.2.10)

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 講師/理学博士・技術士 大村一夫氏(大和地質研究所)

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