産・学連携は企業側主導がより効果的
成功の鍵は明瞭な意思疎通と役割分担

景気回復が本格化したとはいえない現在、建設業を含む多くの企業にとって研究開発は頭の痛い問題だ。収益がさほど向上していない状況で、多くのカネやヒトを研究開発に割くわけにはいかない。かといって目先の収支にとらわれ研究開発を怠ることは、他企業との技術開発競争に遅れをとり、ひいては企業の衰退を意味するからだ。そこで、金銭コストや人的コストを抑え、より高度な技術開発を探る方策として広まっているのが、企業による大学や研究機関への委託研究や共同研究などのいわゆる「産・学・官連携」だ。
 11月12日、郡山市の日大工学部で開かれた「第5回産・学・官連携フォーラム」では『より魅力的な産学官連携の輪づくりから新製品創製へ』をテーマに、研究の実用化を念頭に置いた産学の連携のあり方をめぐって企業側と大学側の各代表者によるパネルディスカッションが行われた。
 パネルディスカッションに先立ち基調講演を行った長平彰夫教授(東北大学大学工学研究科)によると、企業の大学の研究機関による連携といえば、以前は大企業の専売特許のように考えられていたが、2000年度以降中小企業の参加が目立ち始めているという。
 とはいえ、当然のことながら、大学への研究委託が必ずしも新技術や新製品の開発に直結するわけではない。企業側としては委託費用を支出する以上、それなりの成果を期待したいところだが、研究の実用化による投資資金の回収という企業側にとっての最終目標に到達するためには乗越えなければならないいくつかのハードルがあるようだ。
 連携による研究開発がうまくいかない場合の特徴として、企業側のニーズと大学側の意図の不一致があげられるという。例えば企業側の立場としてはコストを抑え、より売れる製品開発に結びつく研究を期待するが、研究者側は売れる商品づくりよりも研究に対する知的好奇心から出発するため、研究開発自体は進むものの実用化には結びつかない場合などである。また、連携に際して企業側と大学側の役割分担が不明瞭である場合も成果は出にくいという。

明確な意図ある企業側発信が連携のカギ

さらに、連携以前の問題として、大学教授が気難しい場合が多いなど中小企業にとって大学などの研究機関はまだまだ敷居が高すぎるとの企業側からの指摘もある。こうした声に対してパネリストの一人として出席した出村克宣教授(工学部建築科)は「連携するかどうかは別として、企業側に何か研究のアイデアがある場合、まずは気軽に相談してもらいたい」と呼びかける。
 日大工学部建築科と県雨水活用事業協同組合(藤島寿理事長)により共同開発された雨水ろ過長期保存システムを備えた学部内の「心静緑感広場」が今年度の都市公園コンクールで国土交通大臣賞を受賞するなど産・学連携の成果は確実に結実し始めている。
 そうした中、産・学連携が企業側にとってより実りあるものとなっていくためには、「研究のための研究」に陥りがちな研究者側ではなく、新製品や新技術の開発という明確な意図を持った企業側からの発信による連携がカギとなりそうだ。さらに連携にあたっては、企業側と大学側との緊密な意思疎通と明瞭な役割分担が必要となることは言うまでもない。(04.11.15、T・S)