地元業者でも、やれるじゃないか!
国交省主催「PFIセミナー」が人気

 国土交通省東北地方整備局の主催で、「PFIセミナー」が今月はじめ、仙台市で開かれた。やはり注目は山形県の地元企業3社がPFI事業に取り組んだ事例紹介だった。対象となったのは、山形県が発注した鉄筋コンクリート(一部鉄骨鉄筋)7階建て、延べ2900平方メートル(戸数は2〜3DK30戸)規模の『県営住宅鈴川団地移転建替等事業』だ。12月には建設工事が始まり、18年1月の入居開始をめざす中堅工事である。完成後の維持管理は20年間、事業方式はBTO方式《民間事業者が自ら資金を調達し、施設を建設(Build)し、その所有権を公共に移転(Transfer)し、その代わり一定期間(数十年)管理・運営(Operate)する権利を得ること》。平成15年10月の工事公告以来すでに1年が経過した。これまでの取り組みを(株)山形PFI(本間設計・山形建設・山形ナショナル電機)の代表として、山形建設開発企画野々村則夫主任が約20分にわたりその成果を述べた。このセミナーに東北地方の建設業者が多数参加したが、「地元業者でもやれるじゃないか!」という証明と自信を与えた。また、大手企業優位の傾向にあるPFI事業に、山形県が地元企業優先の工事発注を作り出した勇気は、他県や東北の各自治体に与える影響の大きさを示した事例発表となった。

全国初の定期借地方式で安定した地代収入

 スケジュールは、平成15年10月の入札公告から、落札者が決まるまでの期間は5ヶ月間、今年の4月23日に土地定期借賃貸借契約に関する合意書を締結、5月には株式会社山形PFIを設立、事業契約書調印(仮契約)、県議会承認を経て7月に設計を開始した。平成38年までの20年は維持管理期間、その後30年は県が行う。
 この事業は、全国初の定期借地方式を採用したPFI事業であり、建設用地は請負業者が調達するというリスクが伴う工事である。建設を請け負った山形建設グループの担当者は、「持ち主を捜す苦労と、少しでも良い土地を探すための苦労、落札後1〜2年が経った段階で地権者が心変わりしないかというリスクは大きかった」とも話してる。反対に地権者側のメリットは建物の所有権は山形県がもち、既存の解体工事費はSPC(「特定目的会社」(SPC:Special Purpose Company)が負担する点だ。また、県から3%(上限480万円)の安定した地代収入が入り、地権者の管理等は一切不要な点もある。デメリットは、土地利用比較効果が少ないこと。例えば、貸駐車場などに利用している場合に比べ、思ったほど金額面でのメリットが少なく、交渉を開始すると難航したことだ。だが、県から地権者に直接、地代が支払われることや貸駐車場は利用者増減で、安定した収入がないことを上げて了解を得ている。

用地決定は計画区域の中心と住居環境の確保

 提案用地が決定した理由には、計画区域の中心地から400メートル内にあり、県が進める中心市街地の活性化に寄与できる事業用地が確保できたことを挙げている。提案用地を生かした敷地計画や入札金額の検討などは、すべての維持管理費用の算出、リスクの確認などを行い、PFIの提案書作成では各社とも初めてだが、地元金融機関の協力で分担連携した。また、入札金額等の全体会議は5回、担当者ベースでの確認や調整には10回以上行っている。配置計画では、敷地が狭いため県が要求する平面駐車場30台はギリギリ取れる状態で、そのため建物一階部分に駐車場を確保した。強調した点は、街中居住の快適さを享受できる住居環境の確保、中心市街地の人口増加、保存樹林第一号の保存活用場所、さらに入居者の憩いの場として緑地整備を図った。

提案用地や提案内容が高い評価で落札!

 最も苦労した提案書の作成・入札金額検討では、設計、建設、維持管理費用はもちろん、SPCを運営する費用、PFI特有の費用の把握が必要なこと。弁護士費用として融資団とSPC費用を見込むほか、SPC管理費用として事務手続きや業務発生費用などすべて入札金額に組み入れる業務だ。出資者に対する配当、長期に渡るSPCの利益の確保も見込む必要がある。対価を重視するあまり、これらの費用を見込んでおかないと落札後に苦労するのはSPC側となるので注意が必要だ。
 今回のPFI事業の採点結果は、入札金額では4グループ中2番目に高い金額だったが、提案用地や提案内容によって他グループより点数が高く落札できた。今後は事業契約書締結の業務が始まり、県、融資団、SPCでの検討業務で契約内容の詳細の明確化が図られるが、ここからSPC側弁護士が必要となる。またSPC側もPFIの知識や法務知識が必要となる。同時にSPC設立を平行して行うが、PFI事業だけの会社を設立することから事前に各行政機関と協議を行っておくことが賢明である。

地元参加型は小規模・地元連携・単純スキーム!

 次ぎに現在の事業の状況であるが、設計締結の準備はもちろん、事務的なところでは、プロジェクトファイナンスベースでの各種契約の締結を進めている。各業務委託での契約では、事業契約書でのSPCリスクのすべてを各業務委託契約者に移転する。これは契約書の中に細かく規定されるもので、SPC側で契約書を作成し融資団と交渉を行う。また、その契約書をもとにキャッシュフロー表などで検討を行い、融資団とともに検討交渉を行う。これによって担当者ベースでも財務・会計・工務等の知識が必要となる。また、SPC側弁護士、公認会計士等のアドバイスが必要となる。今回のPFI事業では、山形県内の地元3社による落札となったが、その要因としてグループ内の連携、さらに地元金融機関との連携、また、イニシャルコストが5億円程度の小規模のPFIだったこと、単純な事業スキームで初めての参加でも参加しやすかったこと。事業者の事業用地提案などがあげられる。最後に山形建設としては、PFI事業を通して得たノウハウを生かして、また、それぞれのPFI事業の内容に応じた発注者、利用者に対して高いサービスの提供ができるように最良の提案をめざしたい。(04.11.9)