成井英雄市長を交え白河の将来を語る!
“安心して暮らせる地域社会とは”を問う

 中心市街地の空洞化や農村地域の衰退など地域社会の抱える問題が噴出する現代にあって、安心して暮らせる地域社会と何なのかを問う「地域活性化フォーラム」が、“開かれた国立大学法人”をめざす福島大学の主催で10月26日、白河市の市文化センターで行われた。会場には成井英雄市長をはじめ、市内で活躍する若手経営者や市民団体の代表など6人が参加してパネル討論会が開かれ、あらためて白河地域の「新しいまちづくりとは何か」を会場の市民とともに考えさせられたフォーラムとなった。パネルディスカッションの前に鈴木浩共生システム理工学類教授が「新しいまちづくりへの挑戦」と題して講演を行い、白河のまちづくりへの取り組みを提起した。

「ひとり勝ち社会」をどう乗り切るか!

 まず、鈴木教授は、「人口が決して増えない時代に、人口の増加、市街地の拡大が地域社会の発展と考えることはできない。絶対に人口が増えないのなら、別なシナリオを描かなければ、まちは衰退する。白河のような地方都市は市街地の脇に農村部を抱えるという大都市にはないユニークな特長を持っている。もっと市街地と農村部の交流を深めないと日本の農業政策の立ち後れとともに、地域社会の衰退は目に見えている。そうした中で日本が、「地域再生」や「都市再生」をめざすための地域再生本部を設置したのは、昨年11月だが、世界的規模で広がりを見せるグローバリゼーションに対応するため「規制緩和」を進め「市場原理」・「競争原理」を社会経済の基本原理に据えたが、「競争原理」は勝ち組と負け組ができる社会で勝ち組はほんの一握りで、社会はこれを「ひとり勝ち社会」と呼んでいるが、その波は地方にも及んできた。国や地域社会はそれをどう受け止め、地域格差の拡大と地域問題を「自己決定」と「自己責任」でどのように乗り切れるかだ。さらに、超少子化・高齢化など急速な進行でこれまでの制度や枠組みでは地域は維持できない。これにどのような手を打つのかがまちづくりの課題となる。

地元工務店が請け負えば地元が潤う!

 例えば、白河の農業問題を取り上げた場合、郊外の農家と市街地の市民の間で農作物の“行って来い”の関係は昔に比べ少なくなったが、もっと双方の連携できる仕組みを考えなければならない。市街地の市民が出す“生ごみ”が循環することで新しい有機農業、無農薬・低農薬農業に発展させた地域がたくさんできた。そこで作った農作物を市民が入手する「循環型農業の仕組み」を山形では成功させているが、こうした地域内の文化を考えることが大切だ。また、白河市の1年間で建築される住宅は250戸から300戸で世帯数に比べて少ない。これは私の逆算法だが、世帯数を40(ないしは50)で割るとその年の住宅建設戸数がでてくる。福島市の世帯数10万を40で割ると2000戸から2500戸ぐらいだが、白河市は世帯数が1万5000くらいなので、50で割っても300戸以上になってもよいはずだ。この戸数を地元の工務店さんが請け負えば、地域の経済が潤うが、大手住宅メーカーが請け負えば、8割がたは地元の経済に流れない。これをどうすればいいのかが私の提言する根拠である。

閉店するにも振る舞いの仕方がある?

 また、県下の大型店の立地問題についてだが、現在の立地は市街地ではなく、都市計画の規制もない都市と都市の間の農村部である。ここでショッピングセンターは視野を広げていく。そこに国道でも走っていればそこは狙い目だ。そこの都市にある商店街は衰退するのは当たり前である。福島市のあるバイパス沿いに年間売上計画が250億円のショッピングセンターができたが、マチなかの商店街の一軒の年間売上は5000万円なので500軒分の売上げを確保することになり、地元に潤いはなく、地元商店街の結果は火を見るより明らかだ。その大型店を地元の経済、小売業、商業、地域社会とどのように共生するかという仕組みを作りたい。これが私どもの大型店に対する戦略である。
 これから福島県としての制度づくりをするが、地域に出店するのであれば、どこに出店し、どのように地域に貢献できるかの姿勢方針を出して欲しいというのがひとつの柱である。売上げが落ちたら即閉店してしまうのではなく、閉店するにも振る舞いの仕方があるはずだ。出店立地の方向付けを地元側から注文を付けるためにも大型店の協力を得たい。
 もっと大きなハードルは、大型店を迎え入れたい地域の人たちの了解を得ることがいちばん難しい。車社会を前提とした郊外店がどんどんできる中で、お年寄りが安全で豊かな買い物ができるか、それが成り立つのかどうかである。日本はあまりにも車社会に依存した地域社会を形成してしまい、東北に住む私たちは、一日足りとも車のない生活は成り立たない不安な状況になりつつある。

地域循環型で長持ちする住宅づくりを!

 郊外のニュータウンは若くて子どもを育てるには快適なニュータウンだが、子どもが育ち出ていった後はどのような生活が成り立つのか。日本のニュータウンは1世代限りのニュータウン化し、家を造る心構えがこの20〜30年で変化してしまった。日本の家の平均寿命は国土交通省の発表で26年だが、アメリカは44年、イギリスにおいては75年で3世代が暮らすが、その間に日本では3軒の家を建てなくてはならない。こんな効率の悪いこと、または資源のムダ使いを止める地域循環型で長持ちする住宅づくりを設計事務所や工務店、さらに地域住民の理解の元でこうした仕組みをつくるのが大きな課題で、「広域連携」が求められる。

将来のまちづくりの方向性とは?

 従来の都市の姿や政策を修正し、自律的な地域社会の再生、および周辺農村地域との豊かな連携を取り戻すことである。またモータリゼーションを前提とした都市のあり方を軌道修正するなどのコンパクト・シティをめざすことが大切である。白河に当てはめて考えると、白河の将来のまちづくりの方向性について、「政策をつくり、合意をする」この二つの約束事を持つことが地域力となる。最後に市民・NPO・産業界・行政が同じテーブルについて合意形成と政策形成の場をつくることが新しいまちづくりための「仕掛けづくり」として大切である。福島大学は地域社会と連携できる仕組みづくりをこの白河でできないかを強く感じている。(文責・富田)

点から線へ、そして将来は面となる取り組みを!

 また、引き続き行われたパネル討論では、成井市長のほか地元の若手経営者らが出席し、新しいまちづくりのための「白河市の課題」について、市民に対する意見や行政に対する要望が語られた。その中で成井市長は、「行政と市民は手を携え、市民参加の合意形成を成せば、集中すべき政策を厳選して経済効果を考えた行政づくりができる」と語り、南湖周辺に2町歩ある市有地を里山空間として利用する案、文化資源の利活用の促進、少子・高齢化社会に対する保健・医療・福祉の問題点、さらに白河の課題や取り組みを知らせる広報やホームページの問題点と改善策、さらに「魅力あるまちづくりには距離と空間と時間を考える必要があり、点から線への取り組みをしながら、将来は面となる取り組みをめざす」と語ると会場からは大きな拍手が沸いた。
 ふるさと農園を営む小笠原清隆さんは、「今の白河は、中心市街地の空洞化が問題だが、大型店舗を中心として繁栄してきたまちなので、今後どうすべきなのかを考えたい。またいろいろな各団体はあるが、お互い何をしているのかが分からない。ひとつの会社としての動きで、内容をひとつにまとめ年一回のイベントを開催するのもひとつの方法だ」と述べた。NTTに勤務する瀬戸安夫さんは、「中心市街地の位置付け及び国際交流と文化都市をめざすことが大切だ」とする意見のほか、白河の蔵づくり、ダルマ市、花火大会、ラーメンフィステバルなどの取り組みについても意見が述べられた。レストランを経営する渡部昇さんからは、「白河市内には職人技を持つ人たちが大勢いるが、その技を提供する場がない。作り方の体験を通して“作らせ方を売り物”にしたらどうか」という意見、主婦の立場で樋口葉子さんは、「マチの空洞化の問題についても、団体、個人、行政がもっと連携を強化して取り組むべき点が欠けているのではないか」という意見も出された。最後にコメンテーターの小沢善仁福島大学地域創造支援センター長は、「新しいまちづくりの挑戦のキーワードは白河の歴史と経済の連携と共生であり、それぞれの仕事を認め合うことだ」とまとめた。

「マチは誰のモノか」を問い直す良きっかけに

【取材を終えて一言】
 フォーラムを終えた3日後、福島市内は大騒ぎになった。平成13年にオープンしたばかりの百貨店「さくらの福島店」が来年3月に閉店撤退するニュースが流れた。地元紙は“号外”を出してこの事実を知らせたが、市民の間では「え!またか!」という驚きと落胆が走った。県都福島の存在も危ぶまれるほどの大型店の撤退である。これだけ地域経済が冷え込んでいたのかと思うと、福島市民足りとて福島の経済に疑問を感じているのでは
ないか。奇しくも講演で鈴木教授が話した「閉店にも閉店の振る舞いがあるのではないか」という言葉を思い起こした。大型店は出店するときも閉店するときも自己都合で勝手に入ったり出たりするが、その度に振り回されるのは地元の経済である。地元商店街は、次から次ぎへと櫛の歯が欠けたようにシヤッターが閉められていく。これまで何十年と店を守ってきた「老舗」も大型店の進出には手も足も出ないが、大型店がマチを混乱させた責任は重くて重大だ。これからもマチの仕組みを守っていかなければならないのは市民である。大型店の出店を野放しにしてきた国や地方の責任も重いが、地元にも責任はあるが、これを機に将来を見据えた規制や制限を今一度考える必要がある。「マチは誰のモノか」を問い直す良いきっかけである。《写真=さくらの福島店撤退を報じた10月29日付福島民報の号外》(04.10.31・富)