7年半後に粗大ゴミ

 いまマスコミ界を賑わせている話題の一つにテレビの地上波デジタル化がある。ところが、この政府主導で進められているデジタル化にはいろんな障壁が待ち構えているようだ。しかも、そのシワ寄せはまたも庶民に向かっている。小泉首相が先頃の施政方針演説で「日本経済は回復に向かっている」と胸を張った。確かに1月の月例経済報告は3年振りに「回復」の文字が踊っていた。この景気回復を引っ張り出す役を演じているのが新「三種の神器」、中でも大画面テレビだ。年未年始商戦の主役だったのである。

 ところが、この最新テレビ、いかに耐久消費財とはいえ、あと7年半経つと粗大ゴミになることを正確に理解して購入した人は、どれぐらいいたんだろうか。はなはだ心もとないのである。7年半、とは何か。それは2011年(平成23年)7月24日を最後に、日本国中からアナログ放送が消えてなくなることである。しかし、いま売買されているテレビの87%はアナログ用の受像機なのだ。デジタル対応は13%しかない。アナログ電波が“停波”すれば、どんなことをしたって画面には写らない。つまり粗大ゴミ化するのだ。大体、これまでの商売で「あと7年半で使えなくなることがハッキリしている商品を、堂々と売り続ける」ということ自体、希有のことではないか。今回の地上波放送デジタル化を「白黒テレビからカラーテレビに切り換えるようなもの」と例える人がいるが、それは根本的に違う。白黒テレビはカラー放送になっても白黒のままでも見れた。今回は、アナログ機は全く使えなくなるのだ。

 平成23年7月になって全国にあるアナログテレビが一斉に粗大ゴミになった時、このゴミの山をどう処理するんだろうか。そうでなくてもテレビ、冷蔵庫、洗濯機など大型ゴミの処理に頭を痛めているのだ。恐らく環境維持での重大問題になるのではないか。「政府が今のテレビでも見られるようにチューナ一を無料配付すればよい」という案も莫大なコストを税金で賄えるか。出来たとしてもそれは税金、つまり国民の負担だ。「いっそデジタル化の時期をさらに先に延ばせば・・」との案も考えられるが、そうなると今度は全国テレビ局が困るのだ。平均45億円をかけてデジタル化を進めている。ザッと1年分の営業収入をぶち込む計算だ。それが先延ばしでアナログとの併設では経費はバカにならない。こうして三方一両損ならぬ“三すくみ"状態が続いている。これに政府がどう対処するか、我々庶民は注意深く目を向け続けるしかないのだ。(2004・2・18)
元福島民報社専務取締役
編集局長 星 一男