地元も「技術」と「先見の明」

 飯を食うにも、茶碗の大きさから箸の持ち方、さらに物を口に入れる動作まで、何もかも飼い慣らされた動物のように躾られて、自分では何ひとつ思い通りにやれなかった建設業。揚げ句の果て、護送船団方式だの、談合体質だの、ダーティーな産業だのと陰口を叩かれ放しの建設業。そしていま、飼い主から突然ヒモを離されて「勝手にやっていいぞ!」と放り出されても「う〜ん・・」と考えてしまう業者も多いだろう。

 なんと国土交通省は、工事に使う資材や機械、さらに工事の方法までも業者に任せるという画期的な方法を今年の10月をメドに実施するこというのである。これまでは、「100円で落札した工事はビッタシ100円でやれ」ということで、ジッと監視の目が光ってきたのに、これからは「勝手にやって」と言ってきたのだ。「100円かけなくても、自助努力すれば、80円でもやれっぺ!」ということなのだろう。国のカネも思うようにならなくなりコストダウンを図るのだ。業者側にすれば、「80円で造るからその過程に文句は言うな」ということになるが、その「手法」をめぐって業者間の熾烈な戦いが始まるようだ。大きな茶碗と大きな箸を持っている企業に全部喰われそうであるが、これからは「独自の技術」と「先見の明」を持てば、「何一つ思い通りにやれなかった」という者には吉報であり、飼い慣らされてきた者にはさらなる試練でもあろう。

 先日、福島市で「福島市を中心とした県北地域活性化シンポジューム」が開かれた。福島大学が福島市から委託された事業で、「産学連携アクションプラン」に沿って実施したシンポジュームである。現在の福島市を活性化したいというものだが、市内の現状は、農業は価格低迷、商業は中心市街地の空洞化、工業は地場産業の衰退、観光業は首都圏に対する依存度高、誘致企業は縮小、撤退などが挙げられ、それぞれの意見が交わされた。特に建設業は公共事業の衰退で、副業や転業が迫られる現実が取り上げられた。こうした産学連携にこそ、建設業が関わりを持つべきだと主張するのは、当日進行を務めた福島大学地域創造支援センターの理学博士で産学連携コーディネーータである八代勉氏(写真右端)だ。

 後日、福島大学にその八代氏を訪ねた。「現在の建設業はこのままだと社会から見捨てられるつつあります。中央にはもうカネないのに、下りてくることばかり考えてはダメです。『価値』を新たな建設へ向けていくことが大切てせあり、建設業は都市計画全体を考えながら仕事を見出すことが受注を増やすことになります、箱モノだけを造っていれば良いというものではありません。画一された方向性や考え方ではこれからは通用しないでしょう。私はいま、市内の建設業者Aと食品工場の研究を共同で行っている。これは箱モノだけを受注する従来の方式から、工場まるごと受注する新たな方式です。工場内部の工程管理を含め「菌」の検査システムから、通常は保健所の仕事である衛生面まで、あらゆる提案を可能にすることによってこれまで以上の付加価値をつけた建物を造ることで、業者も受注量を増やし安定した受注が可能になるわけです。いずれはこうしたトータル的なシステムを構築し、全国展開を狙っています。大学と連携し新たな創出を生み出すことがこれからの建設業の姿ではないでしようか。わが社はこうしたいと思うのであれば、ぜひご相談して下さい。」と産学の連携を推奨する。

 バブル期に銀行や証券会社などがむやみにカネをバラまき、その結果莫大な不良債権を抱え倒産や合併に陥っている。中央ゼネコンも例外ではなく結局、我々の税金で国が大手の銀行、証券、ゼネコンを救済した。だが地元建設業は構造不況の嵐に呑み込まれた形で、救いの手もなく倒産や廃業に追い込まれていく。公共事業という“お上のカネ”は、もう降っても湧いてもこない。地元建設業はいま何をすべきか。国は「好きにやってくれ!」という良い意味での励みと都市計画を見据えた建設業の動き、そして付加価値を付けた受注を考えることであろう。遅かれ早かれ、地元にも現場を見ただけで「この現場は○○会社だな」と分かるような「技術勝負」の世界がやって来るだろう。