可能性見出す積極的な姿勢を評価!
〜今年度ふくしまの棟梁コンクール表彰〜
力強さや素材の持つ良さを表現

 県の平成15年度「ふくしまの棟梁コンクール」で棟梁賞に選ばれた馬場正さんら5人の表彰式が19日、福島市の杉妻会館で行われた。まず日大工学部教授で審査委員長の佐藤平氏から講評を受けたあと、鈴木康之県土木部総括参事が「これからも優れた技能を生かして、良い建築物を残すように頑張って欲しい」と述べ、一人ひとりに賞状と記念品を手渡した。棟梁賞は木造建築に優れた技術と後継者育成に尽くした棟梁や親方に与えるもので今回で10回目、46人の受賞者が誕生した。

【講評】

(1)馬上正氏(建築大工)現地審査対象:諏訪神社 いわき市
馬上氏は、52年間にわたり建築大工として活躍されているが、その間、職業訓練指導員として、これまで7名の技能者の育成に務めてこられた。今回、審査の対象となった建物は、宮司の宿舎兼儀式殿(住宅と社務所)であり、伝統的日本建築として、外観は三社のイメージとし、木造軸組工法で、木をふんだんに使用している。なお、材料は桧や桜、杉などを適切な場所へよく吟味して使用していた。なお、壁はしっくい壁仕上げとし、特に居間においては、仕上げ壁には金色と白色を組合わせて美しい仕上げとなっていた。また、いわき市技能功労賞を受賞されるなど高い技術を有し、磐城建築組合の副会長として活躍され、技能者の育成に取り組まれてきた功績は高く評価された。よって、書類審査、現地審査とも知事賞にふさわしい内容と認められた。

(2)塩田一弥氏(建築大工)現地審査対象:小松邸 大信村
塩田氏は、43年間にわたり建築大工として活躍されているが、その間、2級建築士、1級技能士及び職業訓練指導員として後継者の指導にも力を注ぎ、これまで6名の技能者の育成に努めてこられた。今回、審査の対象となった住宅は、柱・梁などの構造材はもちろん、内部の仕上材も施主の山林より切り出した木材を使用し、その良さを活かした仕上がりとなっていた。内部についても、砂壁の美しい仕上がりとなっていた。また、第1回福島県建築匠賞コンクール最優秀賞を受賞されるなど高い技術を有し、大信村商工会の副会長及び大信村青色申告会の会長として地元の発展に尽カされ、福島県建築大工業協会の白河・西白河支部長として会員相互の連携に努め、技能者の育成に貢献された功績は高く評価された。よって、書類審査、現地審査とも知事賞にふさわしい内容と認められた。

(3)加藤友幸氏(建築大工)現地審査対象:東城邸 保原町
加藤氏は、38年間にわたり、建築大工として活躍されているが、その間、2級建築士、職業訓練指導員として技能者の育成にあたられ、これまで15名の技能者に対し伝統技術の継承に努めてこられた。今回、審査の対象となった住宅は、よく吟味した木材をふんだんに使用し、茶の間においては、大黒柱にケヤキ材を用い、梁は大断面のムク材を使用するなど木の存在感を十分に示していた。内装材は聚楽風繊維壁として、全体として調和がとれ美しくまとめられていた。よって、書類審査、現地審査とも知事賞にふさわしい内容と認められた。

(4)今川一芳氏(畳工)現地審査対象:阿弥陀寺 郡山市
今川氏は、45年間にわたり、畳工として活躍されているが、その間、1級技能士、職業訓練指導員として県内及び県外において、これまで15名の技能者の育成に努めてこられた。氏は、現代の名工にも選ばれた山口県の荒川源一氏に学ばれ、今回審査の対象となった畳は、奈良県の室生寺にも納められた「掛け縫い」の技術による大畳で、氏の独自の改良を加えて完成させたもので、その技術、仕上がりは見事であった。また、郡山市技能功労賞を受賞されるなど高い技術を有し、福島県畳工業組合の専務理事及び郡山支部長として活躍されており、技能者の育成に多大な貢献をしてきた功績は高く評価された。よって、書類審査、現地審査とも知事賞にふさわしい内容と認められた。

(5)江田勝男氏(木製建具工)現地審査対象:吉田邸 中島村
江田氏は、49年間にわたり、木製建具工として活躍されているが、その間、職業訓練指導員として、これまで10名の技能者の育成に努めてこられた。今回、審査の対象となった住宅は、玄関の扇を形どった建具がシンプルな中にも存在感があり、また、居間のガラス戸にはめられた伝統的な組子の出来栄えも見事であった。また、建具木工展示会において県知事賞を受賞されるなど高い技術を有し、当該業種の発展に多大な貢献をしてきた功績は高く評価された。よって、書類審査、現地審査とも知事賞にふさわしい内容と認めらた。

【総評】
今回の応募者における特徴は、建築大工においては、全体に吟味した良質な材料を活かして使用し、細部まで伝統技能を駆使して造り上げ、木造建築物の力強さや素材の持つ良さを表現しようとする試みが見受けられた。また内装に関しても、ムク材を使用し、しっくい壁や砂壁等で美しく仕上げられ、また部屋と部屋との間や部屋と廊下の段差の解消するなど、バリアフリーについても考慮されていた。畳工においては、機械による畳床製作が主流となっている中で、掛け縫いという伝統の手縫いの構法で4尺×8尺にも及ぶ大畳を製作され、その出来映えも見事であった。木製建具工においては、伝統的な組子のデザインも見事な出来映えであったが、そこに使われているデザインは、独自のアイデアを加えて、新しい可能性を見出そうとする積極的な姿勢が見られた。最後に、このコンクールによる顕彰が、伝統技能の伝承を通じて、地球環境の保全や、美しい景観の形成、ひいては住みよい地域づくりに貢献することを期待し講評とする。(写真・長尾)