地元企業と行政との連携を図り、大学の生き残りを模索する日本大学工学部との「産・学・官連携フォーラム」が11月7日、郡山市の日大工学部50周年記念館で開かれた。これまでに過去3回開かれたが、大学側の一方通行のフォーラムに終始したことは否めないが、4回目となる今回は、大学の中身の改革で産業界とのビジネスを押し進める姿勢を一層鮮明にした。
 本音で語るパネルディスカッションでは、企業側と大学からそれぞれ3名のパネラーが出席したが、官側からの参加はなかった。「より魅力的な産学官連携の輪づくり」をテーマに2時間半にわたり、活発な意見が交わされ、昨年とは“ひと味”違った大学側の本音発言が相次いだ。コーディネーターには長平彰夫東北大学工学部教授、パネラーには東北エンータプライズ社長の先崎一郎氏、アスター工業取締役の石川宏幸氏、郡山地域テクノポリス推進機構の大塚淳常務理事、日大工学部土木工学科教授の長林久夫氏、同建築学科教授の出村克宣氏、同情報工学科教授の白井建二氏が務めた。

第三の利益を産むことを本気でやれ!

まず先崎氏は「本音で語って欲しいということなので、はっきり言わせてもらえば、この地域における産・学・官の連携はなっていない。連携であるかぎり、ビジネスであるはずだが、事業が成功なのか失敗なのかがわからない。その辺の所を厳しく追及していくことが大切なのではないか。大学側の“地域貢献”のあり方が慈善事業に傾いていないかどうかだ。また、企業側も大学からの情報はタダだと思ってはいないか。『有料でも大学の協力を得たい』という評価を企業側に与えることが大切」と口火を切った。さらに「企業側が大学に何を期待するのかだが、一つは、卒業生からベンチャーが生まれること。二つに日大ならではの特化した売れる商品開発だ。地元企業だけではなく、全国の企業と手を組むことも大切だ」と大学の役割を追求した。さらに、大学が現実に置かれている立場にも言及し、「学生の授業料と文部省の補助金だけでは経営的に難しい時代になったのだから、第三の利益を生むことを本気でやることだ」と述べた。また、「企業側も助成金や補助金を貰うのを悪いとは言わないが、身銭を切ってやること、リスクを負うことが大事だ。助成金や補助金を貰ってやると失敗例は多いのも現実だ」と切り込んだ。

企業への技術移転が進んでいない!

大塚氏は「大学側の企業への技術移転が進んでいない。大学は最先端的なものや、新しいものを創っているという風土を産業界与えるべきだが、そうした努力がこの郡山市や周辺にはない。会津大学がある会津若松市の方が進んでいる」と述べた。また「企業側もまだ、大学の玄関先で話しをする程度で、大学のご好意にすがっている状況ではないのか。大学は何ものなのかが分かっていない。同じく大学も企業は何を求めているのかが分かっていない。少なくても大学側に両者を取り持つコーディネートできる先生が必要だ」と双方の理解度の不足を指摘した。
 それに対し教授側は「弁護士は2万〜5000円を相談料として取るのに、大学がタダということはないが、企業側が中身がないというのであれば別だ。何をやれば利益を生むのかを理解していない所はある。大学の先生も錯覚している先生もいるが、産業界の人たちと互いによく知り合う機会を持って、本音で話し合うことが大切で、産も学も『人・モノ・情報』を持たなければならない。これからの大学は産・学の連携がないと大学としての存在はない。大学にも将来、委託研究、製品開発などから、どうしても企業的なものが必要になる」などの意見が出た。また「教授自身にもお金の計算が疎いのも事実だ」と本音も覗かせた。

大学にはコスト意識が足りない!

先崎氏は「大学の先生には、コスト意識が足りない。現在、出村先生は雨水処理施設を手掛けているようですが、雨水処理施設をつくることが目的ではないはず。売れるモノを造らなければダメです。コストはどうなのか、世の中にとって価値があるのかを考える必要があり、好き勝手にモノを造ってはいけない」と企業の立場での意見を出した。
 また参加者からは「中小企業、零細企業の我々が大学に依頼することはほとんどないが、その点で石川さんは、どういう方法で大学と接触したのか」との質問が出た。これに対し石川氏は「こちらから接触したことはないが、友人や知人、それに大学からの誘いなどで大学とコンタクトが取れた」と述べた。
また「大学には年間100件の案件があると聞くが、それに加わることは出来ないのか。大学側との連携がないので、提案もなければアプローチもない。補助金の申請もこれまで一件も通ったことがないのは、大学の先生の名前がないのも影響しているのか」という厳しい意見も出された。

企業と大学で儲けられるモノを造れ!

まとめの「より魅力的な産学官連携の輪づくり」では、先崎氏から「大学は研究者養成の教育から、職業人を創る教育が必要で、企業に役立つ最新の技術、スキルを提供することだ。『お金を産む、マーケッテングをする、製品づくりできるリーダー、考える力を養う』そうした教育が大事。企業は即戦力を必要としているので、大学で家庭教育や学校教育まで教える所ではない」と大学の教育制度にも触れた。そして「企業と大学で儲けられるモノを造れ」と強調した。
 大学側から「産・学・官が連携していくことが、これからは大切で、企業にとって、スピード性のある大学の教育と企業の感覚を身につける。大学も戦略的に、組織的の方向で進んでおり、工学部も変わってきている。企業のお手伝い的存在でなく、マネジメントできる学生を育て、大学の生き残りを賭ける」と大学の存在をアピールした。
 最後にコーディネーターの長平教授が「大学は経営センスでの発想が欲しい。マネジメントテクノロジーを学べば企業は儲かる。企業はビックパレットにある技術サポートセンターからの情報を基にステップして欲しい。知っている企業と知らない企業の差はある。医療・福祉・環境分野で積極的に取り組むべき。目線の違いを越え、組織的に戦略的に大学も取り組む」と結論をまとめた。(文責・富田)

基調講演やポスターセクションも開催

またパネルディスカッションを前に、「日本経済の再生と都市環境との共生」と題し、日本大学経済学部の田中啓一教授の基調講演が行われた。
その中で田中氏は「地球環境は日々悪化し、気温が2°上がればオランダはなくなり、2〜3°上がれば東京は危機に見舞われ、神奈川は洪水になる。」と警告した。田中教授は「日本の経済回復は本当なのか?」、「開発と環境との相克から共生の世紀へ」など14項目にについて持論を展開した。

 また記念館では「産業廃棄物を用いた建設材料の開発」や「遷移帯の改質によるセメントコンクリートの強度改善」「鋼板型枠を用いたPC複合の開発検討」「水質浄化用ブロックの開発と雨水再資源化システムへの利用」「産業廃棄ガラスのリサイクルー着色ガラスの透明成分の回収方法」など23項目にわたる集団による研究テーマをポスターで掲示した。


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