首都圏大停電の前の正念場

 先にこの欄に掲載した「マジの話だよ、首都停電」がようやくマスコミでも騒がれ始めた。もう4月。東京電力の福島県・新潟県の原子力発電所17基が間もなく全部ストップする。1730万キロワットの電気が起こせなくなる。東京電力の設備能力の4分のl、実際の発電量の40%が送電出来なくなるのである。この夏にはピーク時に約1000万キロワットの電力が不足するだろうという。「首都圏の大停電は必至」と毎日新聞のコラム「経済観測」では憂いている(4月3日付け)。

 われわれ福島県の地元からは「それ見たことか。東電があまりに地元をないがしろにしたからだ」「物を使い放題の、飽食時代に浸りきっている東京都民もここらで戦時中みたいに、一度電気が来ない生活を経験するといい」という声も聞こえて来そうだが、実はこれからが福島県民にとっての正念場でもあるのだ。恐らく間もなく「このまま電力不足を我慢させる気か。対策はどうなっているのだ」という都民から激しい非難の声が起きて来るだろう。もっと強力な声は、最も被害が大きい経済界からの圧力だろう。「それでなくてもドン底の日本経済に、デフレの追い打ちをかけて沈没させる気か」といった意見は福島、新潟両県に向けられたあと、たちまち政治の場に上げられるだろう。政治の出番は必至だ。そうなった時、私たち県民はどう対処したらよいのか、まさに正念場に立たされてしまうのである。17基の原発のうち、検査が終わって原子力保安院が「安全上の問題は無い」とのお墨付きを出している原発が増えて来つつある。これらの原発が次々に運転再開すれば、この問題はたちまち一件落着である。でも、あれだけ騙し続けてきた東電側の隠蔽体質は、そう簡単に許せるものではない。

 政治問題化して小泉首相が指導力を発揮してきたとき、地元がこれに対しどういう態度を表明するのか。これは福島県政にとって重大問題になる、と思うのだ。現在は、東電側がノド元まで出かかっている「ぜひ、安全が確認された発電機から発電を再開させて欲しい」の言葉を言い出せない状態だが、原発所在地では意見が二分している一方、佐藤栄佐久知事も新潟県の平山知事も「運転再開をうんぬんする時期にない」という態度のままだ。政府と地方政治とのぶつかり合いになる可能性だって小さくはない。マゴマゴしていると電力需要ピークの暑い夏がやって来る。その前に福島県の正念場がやって来るのだ。(2003・4・3)
元福島民報社専務取締役
編集局長 星 一男