超高層ビルが美しい街か

 愚息がアメリカ・フロリダ州の航空大学に留学していたとき、オーランドやデイトナビーチを2回訪れた。デイトナは自動車レースで有名だが、高いビルがほとんど無い。デパートはせいぜい2階建てで、代わりに恐ろしく奥行きが深い。東西南北、歩いても歩いても売り場が尽きない。「何で、こうなの?」と息子に問うたら「こんなに土地が広いのに、どうして高くしなければならないの?」と逆質問された。そう言われると「なるほど」と納得してしまう。高く積み上げて階段を昇り降りしたり、金かけてエレベーターを付けたりする必要はないのだ。狭い日本での常識は、まるで通じなかった。

 いま、東京では超高層ビルのラッシュだ。政府が景気回復の一助として、ビルの容積率を1000%から1500%に拡大したためだ(緑地を付ければという条件付き)。2003年中に28の超高層ビルが建つという。全てが貸室向けである。02年9月の丸ビルに続いて汐留にシオサイト、4月に汐留シティセンター、六本木ヒルズ、10月には品川グランドコスモス、という具合。この結果、供給が需要をはるかに上回って、空き部屋がどんどん増えるという「2003年問題」が現実のものとなった。しかもデフレとあって、新設ビルは“最新設備を備えて値段はこれまでと同額”とくれば、われもわれもと新ビルに移ってしまう。いかに入居の需要が全国一あるという東京でも、これでは既存貸しビル業者はひとたまりもない。倒産の断末魔が聞こえている。

 都市再生特別措置法による緊急整備地域での行政で、総合デフレ対策として「民間の資金やノウハウを活用して、新たな投資や消費を喚起する」と謳っているのだが、こんなことで都市が住みよい街に再生出来るのだろうか。実は、同じように規制緩和して民間資金を導入する施策は前にもあったのだ。中曾根内閣時代だから1980年代だったと思うのだが、いわゆる「民活路線」である。その時も、国際都市を目指してオフィスビルやマンションが建設された。これで、どれだけ都市再開発がなされ都会がどれだけ住みやすくなったのか、さっぱり目に見えない。かなり疑問が残る政治だった。
そしていま、それを繰り返している。超高層ビルがあっちこっちにニョキニョキ建てることがどうして美しい街を作ることになるのか。冒頭ののデイトナの話しは別としても、人間は何故に数十階の高い所に住ねばならないのか。もっと自然と共生できる調和のとれた街こそ“美しい街”だ、と思うのだが・・・。(2003.4.7)
元福島民報社専務取締役
編集局長 星 一男